女性とヴェール

胡瓜は果物であるというと笑う人がいるかもしれない。でもイランでは胡瓜は果物であった。知人を訪ねていくと応接セットのテーブルにブドウやオレンジ、ザクロに混じって胡瓜が置かれていた。「ペファルマイー(どうぞどうぞ)」といって果物を食べるようにすすめられる。アングール? ポルトガル? アナール? ヒヤール? と言ってすすめられたのだ。

胡瓜は一人前のもてなし果物であった。ちなみにラグビーボールのようなメロンはハラボゼで、大きな長枕のようなスイカはヘンダワーネという名前であった。胡という文字はソグド人やペルシアを表す言葉である。漢民族以外の異民族の総称であるともいわれるがいずれにせよ中国からみて西域を指すことに間違いはないであろう。胡弓、胡桃、胡麻など胡とつくものは西域がルーツであるのだろう。

イスラムの女性は身体を布で覆っている。アフガニスタンではブルカという。イランではチャドールと呼ぶ。国により呼び方も形態も異なるが、夫以外の男性からの目を遮断するということには変わりがない。女性にとってこの被り物はどういう意味を持つのであろうか。私が初めてイランを訪れたのは1971年であった。24歳であった。

会社の秘書やタイピスト達は若い女性であった。彼女たちはその頃流行っていたミニスカートを身につけていた。チャドールを被ることはほとんどなかった。たとえチャドールを着けていても、それはおしゃれなファッションであって現在のような黒や紺の色ではなく明るい花柄のものが多かった。