オプション取引のリスク

すなわち、インプライドーボラティリティが低水準であれば市場参加者が先行きの株式相場の展開が平穏であることを、逆にインプライドーボラティリティが高まってくれば先行きの株式相場の展開が波乱含みになると予想していることになります。シカゴオプション取引所では、このようにインプライドーボラティリティから投資家の先行きの相場観を測ることができる点に着目して、インプライドーボラティリティを指数化し
たVIX(ボラティリティーインデックス)指数自体をオプションの原資産としたVIXオプションを上場しています。

VIX指数は、シカゴオプション取引所で最も活発に取引されているS&P500オプションのプレミアムから逆算されるインプライドーボラティリティを指数にしたものです。マーケットやメディアでは、VIX指数の上昇は、多くの投資家が、先行き株式相場が荒れ模様の展開になることを予想している兆候であるとして、VIX指数を「恐怖指数」と呼んでいます。実際のところ、株式市況を報道する多くのメディアはダウエ業株30種平均やS&P500の株価指数と同時にVIX指数の動向も報じています。なお、シカゴオプション取引所では、VIXオプションのほかにミニVIX先物、VIX先物オプションといったVIXを原資産とする商品のほかにラッセル2000のボラティリティ指数先物等も上場しています。

オプションのプレミアムは、原資産価格と権利行使価格、原資産のボラティリティ、満期までの期間、短期金利の5つの要因によって決定されますが、このことはプレミアムがこうした要因によりインパクトを受けて変動するリスクを抱えていることを意味します。こうしたことからこの5つの要因を「オプションのリスクファクター」と呼んでいます。オプションのリスクファクターが各々一定幅変動した場合にオプションのプレミアムにどの程度の影響を及ぼすかをみる指標を「オプションのリスクパラメータ」といいます。これは、デルタ、カンマ、ペガと、ゼータ(シータともいいます)、ローのギリシヤ文字(クリーク)などで表されます。

まず、「デルタ」は原資産価格が変化したときにプレミアムがどれだけ変化するかを数値化したものです。コールのプレミアムは原資産価格が上がれば上昇し下がれば下落することからデルタは正の値をとります。逆に、フットのプレミアムは原資産価格が上がれば下落し下がれば上昇することからデルタは負の値をとります。プレミアムは原資産価格の動きに大きく左右されることからデルタは、オプションのリスク管理上最も重要なリスクパラメー夕となります。このように原資産価格の変化に対してデルタ自身が変化しますが、それを「カンマ」で表します。すなわち、デルタの変化を原資産価格の変化で割った数値がカンマです。

オプションのプレミアムと原資産価格のボラティリティとの間には緊密な関係があることは前述のとおりですが、原資産価格のボラティリティの変化に対するオプションプレミアムの変化の割合は「ペガ」で表されます。ボラティリティが大きいほどプレミアムは大きくなることから、ベガは常にプラスの値をとります。オプションのプレミアムの構成要素の1つである時間価値は、オプションの満期までの期間が経過するにつれて減少します。「セータ」は、オプションの期間が1日経過するごとにプレミアムがいくら減少するかを示す指標です。したがって、セータは常にマイナスの値をとります。最後に、短期金利の変化に対するオプションプレミアムの感応度を「ロー」といいます。他の4つのリスクパラメータに比べると、ローがプレミアムに与える影響度は小さいものとなります。