外国法と合併

ただし、テクニカル上場といって通常の新規上場審査よりは審査内容が限定され簡便な手続になっています。また、上場会社が非上場会社を吸収する合併であっても、いわゆる裏口上場防止のための規制がかかる場合があります。「合併」という概念は、外国にも存在しますが、外国法上の合併が必ず日本の合併と同様の特徴を有し、効果をもたらすものとは限らない点には注意が必要です。特に「権利義務の包括承継」という考え方は、外国の合併法制、ことに英米法との比較においては、ユニークな制度であると言われています。

また、合併はよく英語で「mergeこと訳されますが、この「ヨの品q」という言葉は使われる文脈によっては非常に意味の広い言葉です。例えば、英米において言うとき、競争法上の企業結合規制一般を指しますので、合併・事業譲受け・株式取得などによりもたらされる企業の結合状態を広く含みます。結合取引が法的に実行された後に、統合の実を挙げるために行う諸々の実務的な作業を「post-merger integration (PMI)」と言うことがありますが、この場合の「mergeこも合併に限ったことではありません。日本の会社と外国会社との合併(国際合併)は学術的には様々な研究が進められているもの

合併と他の組織再編の、一般に認められないと考えられています。会社法下で可能となった三角合併は、国をまたいでの合併が認められないという前提のもと、外国会社が日本の会社を完全子会社とする株式交換が認められたのとほぼ同様の結果をもたらすことができるものとして、鳴り物入りで導入されたものです。通常M&A取引やグループ内再編で活用される手法として、会社法上の組織再編行為には、合併のほかに①会社分割、②株式交換、③株式移転があります。なお、論者によっては、これに「組織変更」(会社法743条〜)を加える場合がありますが、組織変更は、例えば株式会社が合同会社に会社の形態を変更するような単独行為のことであり、通常M&Aやグループ内再編で利用されるものではありませんので、ここでは除きます。

会社分割は、会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を、既存のまたは新設する他の会社に承継させることを目的とする行為です。合併同様に会社に属する権利義務の「包括承継」(法律の効果としての自動的な引継ぎ)が行われることから、一部合併と言えばイメージがつかみやすいかもしれません。事業を承継する主体が既存の会社か新設される会社かにより、吸収分割と新設分割とに分かれます。株式交換は、完全親子会社関係を作るための組織再編行為で、当事会社間の契約に基づき、所定の手続を経て、完全子会社となる会社の株主が有する株式を強制的に完全親会社となる会社の株式その他の財産に交換してしまうものです。

株式を取得して完全子会社にするためには、すべての株主からその株式を譲り受ければよいわけですが、多数の株主がいる会社については、個々の株主との交渉による売買取引が現実的ではなく、1人でも反対する株主がいれば100%化はできません。完全子会社となる会社との契約により、株主総会の特別決議という多数決原理によって、反対する株主がいる場合でも100%化を可能とした平成H年の「株式交換」制度の導入は、M&Aの観点から画期的なものでした。株式移転は、持株会社を作るための組織再編行為で、会社が単独で、株主総会の特別決議など所定の手続を経ることで、その株主が有する株式を強制的に新しく設立される持株会社の株式(および他の財産)に交換してしまうものです。株式移転は、平成H年に株式交換と同時に導入された組織再編の手法です。